会長挨拶
第9回日本DCD学会学術集会
大会長 黒川 駿哉
児童精神科医、不知火クリニック/慶応義塾大学医学部医科学研究連携推進センター
■DCD(発達性協調運動症/発達性協調運動障害)とは
発達性協調運動障害(DCD) は、発達障害の一つで、生まれつき脳の特性により、手先や全身の動きの学習・協調がうまくいきにくいものです。怠けや練習不足ではありません。
体育だけでなく、食事や着替え、書字なと日常の多くで困りごとが生じ、努力を重ねても報われにくい経験が続くと、自信の低下や不安・抑うつに繋がります。
実際のDCD診療でも、運動会なとをきっかけに不登校になる子ともは決して珍しくありません。
DCD特性を有する子ともはクラスに1~2名いるとされますが、社会の認知はまだ十分とは言えません。
■今回のテーマに込めた想い
DCD学会は2026年で第9回を迎えます。
国内では病態や支援の知見が着実に蓄積されてきましたが、市民の皆さまへ届けられる機会は限られてきました。
初学者を含めてより多くの方が参加できるよう「知る、わかる、行う、広げるDCD支援」というテーマを選びました。
市民イベントでは、これまでの知見を最大限、地域や社会に広げることを目的にします。私たちはDCDという病名をただ広げると言うよりは、ニューロダイバーシティ(神経多様性)、すなわち脳の特性の違いを人間の多様性として尊重し、「普通じゃないマイノリティも認めよう」から「普通なんてそもそもない」という構えを、福岡のまちから全国に根付かせたいと考えています。
■皆さまへのメッセージ
実行委員会は、DCD当事者の保護者を含む多様なメンバーで構成し、作業療法・理学療法・言語聴覚の各協会や民間スポーツクラブと連携します。オール福岡で、診断の有無にかかわらず「運動が苦手でも楽しめる」インクルーシブスポーツの体験の場を作り、療育グッズの紹介、DCDの基本知識、地域の医療・療育・教育資源の案内や相談につなげます。
私たちが目指すのは「診断があってもなくても困りごとに手が届く社会」です。
このような社会の実現は、私たちだけでは行えません。多様で開かれた福岡から、地域の実装をともに進めましょう。
皆さまのお力添えをとうぞよろしくお願いいたします。


